2007年7月 7日 (土)

「朝ごはん 食べ終えたのは日暮れ時」

10年目4月某日AM9:00

今日は休日、普段は青いマットのジャングルで相手を退治したり退治されたりしているレスラーも年相応の女性に戻る日。各人思い思いの予定を組み込んで、朝食の最中にも今日の日程など諸々の話をしているのは微笑ましくも喧しい。

ここは寮の食堂、休日も朝と晩に食事が出てくれるのは一人身としては大変有難い事なので、ついつい頼ってしまうのだが、レスラーと一緒だと余分な仕事や遊び相手(遊ばれ役)になるのが困ったところ。そして、今日も今日とてまた問題が発生する。

「あれ、白石さんは?」

自分としては遅めの朝飯を食べながら相羽さんに声を掛ける。先程寮母さんと話をした限りでは、寮に残っているのは3人だけ。今一緒に食事をしている相羽さんと、ここにいない美月さんと白石さん。美月さんはいつも早寝早起きなので、既に食事を終わらせて部屋で本でも読んでいるのだろうから、気になるのは白石さんという訳だ。

「あ、さっきも美月ちゃんと起こしにいったんですけど、布団にしがみついて離れないんですよ。出来れば3人で一緒に買い物に行こうと思ってたんですけど」
「そうか、あの子もきっと試合とか練習で疲れてるのかもしれないね、じゃあ今日は2人で行ってくれば?」

というと、最後にもう一回起こしてきますね、と言って席を外し、その10分後には2人で寮を出て行った・・・結局駄目だったらしい。その30分後、のんびりとコーヒーを啜っていると、最後の人物がポテポテ、ポテポテと音をさせながら階段を下りてくる、白石さんおはようございます。

「・・・・・・おはよう・・・」

いつものように眠たげな瞳と、いつもどおりのジャージ姿。寝起きだからこうなのではなく、この子の場合はいつもこんな感じ。この状態から普通に練習や試合に入れるのだから、彼女の起動スイッチは、きっととても見えづらい所に存在しているのだろう。

「じゃあ、ここに朝ごはんは置いておきますから、食べ終わったら流しに置いて下さい。ちょっと自分は買い物に行ってきますね、30分もあれば帰ってきます」
「うん・・・いってらっしゃい・・・」
「はい、いってきます」

今日は寮母さんに用事がある為、日中だけだが寮の番を頼まれている。その間ノートPCをいじっているだけでは流石に暇なので、雑誌を買いに出掛けついでにお茶請けを購入。今日は白石さんしかいないから、ちょっと高級な物を買っても財布はさほど痛まないだろう。こうして寮に戻ると、いつも懇意にしてもらっている「武井酒店」の車が止まっており、いつも元気の良いヒゲのご主人、白石さんのおじさんが出てきた。

「あれ、今日はどうしました?」
「いや、新潟の友人から和菓子が送られてきてね。でもかあちゃんも俺も辛党だから、それだったらここの女性陣に食べてもらったほうがお菓子も本望かと思ってね」
「ありがとうございます。あ、丁度白石は中に居りますが呼んできましょうか?」
「いや、今配達中だからまた今度。なんとなれば毎日会える訳だし」
「それもそうですね、じゃあ有難く戴きます」

食堂に戻ると、白石さんは殆ど食べ切っており、窓の外の青空を見つめていた。

「ただいま」
「おかえりなさい・・・」
「お、食べ終わってるね、じゃあ片付けはしておくからゆっくりしてて。あとケーキは俺から、あとこの和菓子は武井さんからの貰い物。ケーキは白石さんにしか買ってきてないからばれないように処分しておいてね」
「・・・・・・・・・」

2つのお菓子を並べて置いたときに反応が無かった事で気が付けばよかった。まあ、返事をしないというより声が小さかったりタイミングが遅いのはいつもの事なので、全く気にせずにテーブルを片付けた後、紅茶を白石さんの横に置いたときに確かに違和感はあった。今から思えば瞳孔が少し広がっていた気がするが、そのときには全く気が付かなかった。

「じゃあ、俺は寮母さんの部屋に居るから、出る時には声を掛けてね」
「・・・・・・・・・」

全く気が付かなかった。

PM4:00

「ただいま~」ただいま戻りました」
「おかえりなさい、今日は早かったね」
「今日の夕飯はエビチリですからね、えっびちり~えび~ん?」
「どうしました?」
「なぎさちゃん、何してんの?」

白石さんは、自分がテーブルを離れて時と全く変わらない体勢で座っている。目の前には手を付けられていないお菓子が2つ。

「・・・・どっちから・・・・食べていいのか・・・わからない・・・」

はい?

「聞いたことがあります。その人にとって、全く甲乙付けがたいものを2つ並べた場合には、その人はどちらに先に手を付けていいのかわからず思考が停止してしまい、理論的には最終的に餓死してしまうだろうという論文がある事を」

美月さん、それ何て民名書房?というよりこの2つが甲乙つけがたいのか、確かに2つとも細工が可愛いけど。

「確かになぎさちゃんの部屋は、風船とかぬいぐるみとか、ふわふわしてるものに占領されてるもんね」

そうなのか、それは意外・・・でもないか。芸能人のポスターを貼ってたりとかの方が逆に想像できないし。

この後美月さんのいうとおりに、和菓子の置き場所を少し遠くにずらしただけで無事白石さんの箸が進み、新世紀プロレスから初の餓死者を出すことは逃れられた。しかし、そんなこんなでバタバタしているうちに他のレスラーも戻ってきてしまい、私が高級ケーキを一人にしか買ってこなかったことがばれてしまった。

その行為に対する攻撃は凄まじく、結局全員分購入する羽目となる。ああ、ひどい目にあった。

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2007年5月 4日 (金)

お笑い門オンステージ第4.5話 「 誰よりも 公私を分ける 名役者」

さて、今日の話はN様の所でされている川柳SSに応募する為の話なのですが、気がつくと、いつもお邪魔している所から少しずつパクっている気がしないでもない。いや、間違いなく確信犯。ここでは敢えて名前は出しませんが、ここに来られている方々なら皆様おなじみの所です、どうかご容赦の程を。そしてken様、事後承諾ですが、作品をお借りいたします。

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1年目5月下旬 生徒会室

何故今日ここで同好会のミーティングを開くのかというと、まだ折りたたみ椅子を片付けていないのもその理由の1つだが、お茶とお茶請けの減りが早いので、普段から余り気味の所で開催しようという真っ当とはとても言えない意見を、生徒会長自身が提案したからだ。本日は千秋さんは出席せず、山本さんとミミさんは後から来る事になっている。

それでは、第2回プロレス同好会ミーティングを始めます。今月の試合の事も含めて、何か意見がありましたらお願いいたします。はい、藤原さん。

「今後、ここがヒーロー同好会として大きくなるためには、なんというか外連味が必要だと思うんですがどうでしょうか」

いや、うちはプロレス同好会ですが。でも藤原さんの言いたいことも分かる、来場された皆さんに楽しんでもらうためにはどうしたら良いか、その為には少しでも派手な展開があったほうが良いのは間違いない。でも、一応確認しておくけど火薬関連は使用不可なのは分かってるよね。出来るとすれば、体操部関係にお願いして戦闘員役で出てもらうくらいだよ。

「いえ、そうじゃなくて、もう少し簡単な感じで」

というと?

「例えば、部長が中でポップコーンを売り歩いていると、村上さんが因縁をつけてきてボコボコにやられ、とどめを刺されそうになる、そこを止めに入る所から試合が始まるとか」

ボコボコにやられる前に止めてくれないかなあ。しかもポップコーン如きで生き死にの話になりたくないよ。千春さんも急に話を振られてしかもこんな役では不満なのだろう、ちょっとむっとしている。ただ、にこやかに笑みを浮かべている所も見た事は無いのだが。で、とかと言うからには他にも何かあるの?

「そうですね、出てくるときに口上というか見得を切る場面が欲しいなって今月の試合の時にずっと思ってたんですよ、例えば『待ちに待ってた出番が来たわ、ここは任せて 藤原和美 見参!』とか『驚き、桃の木、山椒の木、ブリキに、タヌキに、洗濯機、やって来い来い 藤原和美!』なんてどうです」
そうか、あなたのご自宅にはきっとCS放送が入っているのですね。でもあまりそのまんまでパクるのは如何なものでしょうか。と言うとそれもそうか、と考え込む藤原さん。

「じゃあ、こんなのはどうですか?」

とお茶を淹れ皆に配っていた小川さんの声、どんなの?

「1つ、瞳に輝く炎と 2つ、2つの肩に背負うは正義 3つ、みんなのヒロイン、藤原和美、只今見参!」

なるほど、小川さんは時代劇ですか。ただ、いなかっぺ何ちゃらとか越後侍でもそうだけど、2つ、2つって重なるのはあまり綺麗じゃないかもね。

「そうですね、先輩も何か良い案があったら是非お願いします」

そうだね、例えば2つ、不撓不屈の溢れる闘志なんてどうかな?基本的に7と5文字で繋げると綺麗に聞こえるよね

「それだったら不屈くらいでもいいんじゃない?もしくは前を少し変えるとかね」

と井上さん。なるほど、バランスをとるんですね、じゃあ1つ、瞳に宿るは漲る勇気、なんてどうです。そうなると3つ、の所も変えた方がいいですかね。正義っていう言葉が入ると綺麗ですねきっと。

「こんにちわ、あら、みんな盛り上がってどうしたの?」

ミミさんこんにちわ。今丁度、入場の際の口上を考えてたんですよ。

「そうだ、ミミさんだったらどんなのがいいですかね」

ミミさんか・・・お、こんなのどうですか?

見目麗しく
皆に優しく
弱きを助け
慕われる
われ
らがヒロイン ミミ吉原。

「う~ん、ちょっと厳しくないですか?とくに「わ」と「ら」の部分が。しかも「よしはら」ですよ」

そうか・・・じゃあ「花に例えば 蘭のよう」だったらOKか。

「でも、口上って事は自分でその台詞を言うのよね?それは少し恥ずかしいかな」

じゃあ、誰かに言ってもらう事にしましょう。さて、2人決まったからには最低あと4人ですね。千春さんも、もし何か良い案があったらお願いします、と話を振ったが残念ながら乗ってきてくれない。すると生徒会室のドアを控えめにノックする音が聞こえる

「失礼します、山本です」

どうぞ、ガンガン入ってきてください。

「こんにちわ、あの、料理研でクッキーを作ったので、是非食べてください」

以前より聞いていた事ではあるが、実際彼女の料理の腕前は大したものだ。先日の筑前煮も絶品だったし、これは最低でも材料費を払わない事には申し訳ないくらいだ。さて、今日の出来映え、は・・・やはり美味しく出来ている。料理にもうるさい井上さんや、全てに対してうるさいだけの千春さんも満足げに舌鼓を打っている。早速小川さんはお茶ではなく紅茶を淹れている、確かにお茶ではなく紅茶だよな。一通り皆でクッキーを楽しんだあと、

「じゃあ、グリっちはどんなのにしようか」

グリっち・・・いまだにこの愛称は聞いていて慣れないなあ。

「グリもさあ、今月の試合じゃ結構悪役が板に付いてたよな。だったらそんな感じの奴を作ってやったらどうだ」

なるほど。

「じゃあ、『リング内ではショッキング、リング外ではクッキング』なんてのはどうです」

そんなに悪くない感じだね、そのあとに「公私を分ける 名役者」なんて入れてみたらどうかな

「公私の前に、「誰よりも」って入れるのはどうかしら」

以降も色々すったもんだの上で、山本さんの口上が決定する。

「リング内ではショッキング、リング外ではクッキング、誰よりも 公私を分ける 名役者 メイク1つでスイッチON! 悪の広報部長 グリズリー山本」

で、広報部長っていう中途半端な役職は如何に。

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2007年4月22日 (日)

レッスルリプレイ外伝 「相羽さんの受難・後編」

「あの、何か心配事でもあるんですか?」

と助手席から声が飛んだのは、買い物が済んで寮に車を走らせているときだった。さすがに理沙子さんは人の表情などを良く観察しているなあ。相羽さんが心配、いや南さんが無茶をしてなければ良いなあと思ってね。

「無茶・・・ですか?」

うん、南さんは基本的には冷静だけど、バイクに乗ると人が変わるんだよ

「変わる?」

さっき、南さんが一人暮らしをしない理由を話そうとして終っちゃったけど、そのバイクが原因の1つなんだよね。少し長い話になるけど寮までの時間潰しには丁度良いかな・・・と麦茶で喉を潤して話を続ける。

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確か団体が出来てから3年くらい経ってからかな、伊達さんが一人暮らしを断念すると、当然その部屋が空くわけだ。そこで手を上げたのが南さん。そのつい先日に限定解除したのも理由の1つだったんだろう、寮だと門限はさほど厳しくないけど音とかそれなりに気を使うからね。そして彼女の場合は練習に穴を開けることも、休むことも無く普段どおり団体で戦ってたんだけど・・・

少し話しは変わるけど、自分も結構峠を走るのが好きなんだ。まあ峠を攻める訳ではないけど、オープンカーで木々の間を抜けるのは気持ちよくてね、朝方の少し霧が掛かったところなんか最高なんだけど、まあそんなこんなでその日も峠の上にある休憩所でお茶をしてた時に妙な噂を聞いたんだ。

「妙な噂、ですか」

そう、バカッ速のCB750が、色んな峠に出没しているっていうね。あ、今はバカッ速なんて言わないか、あとCB750って言うのはバイクの名前ね。その頃はフーンとしか思わなかったけど、その後段々とその話が大きく広がってきてね、最初の話から3ヶ月もしないうちに所謂走り屋と呼ばれる人たちには、限界を超えた走りをする「謎のCBライダー」の名は響き渡っていたんだ。当然南さんの事だったんだけど。

「で、そこからどうなったんですか?」

その後は、社長と井上さん、あとは南さん本人しか詳しい話を知らないんだけど、某暴走集団の頭が会社に乗り込んできたり、峠の荒っぽい走り屋との勝負とか警察とのバトルがあったらしくてね。そこで大分騒ぎになったらしくて、警察からは赤キップ、社長からは峠禁止令がでたんだ。そして免停を機に寮に戻ったのが簡単だけど一人暮らしの話の結末。でも、バイクの話しはこれで終わりじゃなくてね。

「他にもあるんですか」

うん、寮に戻ってからも折角大型のバイクを買ったんだからと、買い物の足代わりにナナハンを駆っていたんだ。皆も、ああ、2期生の2人はそうでも無かったかな。まあほぼ全員、便利だし格好よいから後ろに乗りたがってね、社長は事故らないかビクビクしてたけど、最初のうちはレスラー陣からは結構重宝がられていたんだよね。でも、実は彼女の運転にはある重大な問題があったんだよ。

「スピードを出しすぎる事ですか?」

それ以外に。南さんは、いつもはあれだけ冷静なのに、バイクに係わる事に関しては意固地な部分があるみたいでね「道は自分で走りながら覚える」という信念の持ち主だったんだ。確か最初の被害者は伊達さんだったかな?

2人が4時間くらい帰ってこないかと思ったら、途中で寄った喫茶店でふと手に取った新聞に掲載されていた、美味しいラーメンを食べに行こうという話になったらしく、その記事を読んだだけでメモも何も取らずに出かけたらしいんだ。結局目的の場所には辿り着けずに高速を超高速で帰ってきたらしい、他にも何人かその被害にあっていてね・・・

そうそう一番かわいそうだったのは結城さん、運悪く峠に迷い込んでしまって南さんのライダースイッチがぽちっとなと押されてしまったんだよ。その所為で帰ってきたときには正に精魂尽き果てた状態だったんだ、見てて可哀想になる位にね。それを見た武藤さんもいつもよりツンツン度がアップしちゃってね、南さんと少し険悪な関係になりかけたくらいだよ。それ以降は一緒に行くときにはきちんと同乗者は行く場所の道を覚えてから誘うようになってるみたいだね。

「ああ、だから皆さん運転しない方も地理に詳しいんですね」

まあ、命が掛かってくる場合もあるからね、そういえば最初にいろんな峠に出没したって話もしたと思うけど、それもよくよく聞くと本人曰く、帰り道が分からなくなっても人に聞くのは完璧じゃない、邪道だという考えの元、自分の勘で適当に走る道を決めていた所、多分方向音痴なんだろうね、気がつくと毎回見知らぬ街に辿り着いていたそうなんだ。

折角だから近場の峠を攻めてみよう、という思考回路から結果的に神出鬼没な峠の走り屋になっていたらしい。おっと、丁度いい具合に話も切りがいい所だ、じゃあお疲れ様。と駐車場に車を置き、トランクから荷物を出して寮に運ぶ。

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そして次の日

「どういうことか説明してもらえるかな」

社長室に呼ばれて行ってみると、眉間にしわを寄せた社長と井上さん、困った顔の南さん。で、何で私が呼ばれるんですか?

「何で止めなかった」

なるほど。いやあ、流石に23歳にもなる人を子供扱いできないじゃないですか。その言葉でこちらをギロリと睨む南さん、いやいや、その程度でガンつけないで下さいよ。我々はもっと年がいって・・・い、いやあもう有能な秘書であらせられる井上さんの下でばりんばりん働いておられる南さんですからもう常識的に、後ろに選手を乗っけたら安全運転すると思うじゃないですか、と苦しい言い訳をしてみる。

「南くんはバイクに乗ると人が変わるのは知ってるだろう」

まあ、そうですが・・・すみませんでした、軽率でした。

「うん、さて本題だけど、南くん、どうしてこうなったのかな」

よくよく聞くと、食事をした後、折角だからどこかドライブでもしましょうという事になり、どこがいいか聞いたらどこでも良いと言われたので、夜景の綺麗に見える山に行ったのだが、つい帰り道の下りでほんの少し本領を発揮してしまったらしい。

「仁美はあのくらいなら全然平気だったんだけど」

あなた方と一般人の感覚を一緒にしないように。

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2007年4月21日 (土)

レッスルリプレイ外伝 「相羽さんの受難・前編」

9年目7月某日

「そういえば、ここの皆さんは寮生活をされている方が殆どですけど、何でですか?」

レスラー陣は殆どが寮に戻っており、自分と相羽さん、理沙子さんが残っている。9期生にはどうしても掃除等の雑務がついて廻るのは仕方の無いこと、理沙子さんはこの後も自分と買出しに行く予定なので、自分の仕事が終わるまで少し待って貰っているのだが、理沙子さんは静かに部屋に積まれている昔の団体の資料を読み続けている。

対照的に相羽さんは、今日はもうあがりなのだがジムで待ち合わせでもあるのだろう、着替えは終っているが時間をきにしつつ冬眠前の熊の如くうろうろしては手持ち無沙汰なのだろう、部屋の棚に入っている昔のプロレス雑誌やら、意味が分からないであろう経営の数字の羅列した資料、自分の私物のパソコン誌をパラパラと見ている。

それも瞬く間に飽きたようで、仕事をしている自分の邪魔をするつもりは無いのだろうが話しかけてきたのが今回の発端、何か以前にも聞いた質問のような気がするが、相羽さんが聞いてきたのは初めてかもしれない。

この団体が立ち上がった当初は、当然だけど皆にそれなりの給与しか払えなかったようで、立ち上げの際に結構年季の入った建物にいたのは知ってる?とこの職場では間違いなく必須技能である「口を動かしながら手も動かす」を行使しつつ話を始める。

「ええ、何かお化けが出そうというか、実際出たって話も聞きましたけど・・・今も同じ場所に建物はあるんですよね?大丈夫なんですか?」

出たのは本当だけど、みことさんが除霊をしてからいなくなったようだね。

「え、本当ですか?」

嘘。

「もう、ビックリさせないで下さいよ」

だといいねえ。

「え、何か言いました?」

いえ何も。

「・・・・・」

本当はカンナさんが降霊術を使ったんだけどね

「本当ですか?」

「もう、ビックリさせないで下さいよ」

だといいねえ。

「え、何か言いました?」

いえ何も。

「・・・・・」

まあそれは兎も角、3年目くらいになってくると、ここの団体も金銭的に余裕が出てきて、レスラーにもそれなりに納得できる程度のお給金が払えるようになってきたから、何人か寮から出てみようという人たちはいたんだよ。まず最初はマイティさん、そういえば相羽さんはビデオでしか彼女の試合は見たことなかったんだっけ、などと言いつつマイティさんと伊達さんの一人暮らしの話を続ける。

理沙子さんも話の輪に加わりまず2人の話をした後、で、最後に利美さんの話だけど、と言いつつ大体こういう話をしている頃に本人が出てくるんだよね・・・と頭の片隅に閃くものがあり、少しお茶で喉を潤していると本当にジムの入り口があき、南さんが入ってくる。おし!聞かれて無い。

すると弾けるように相羽さんが立ち上がって入り口まで小走りで向かい「利美さん、お疲れ様です!」と大きな声で挨拶をする。あの距離で大きな声を出す必要もあるまいに、南さんも苦笑しながらお疲れ様と返事を返す。おや、今日は相羽さんとお出かけですか?と聞くと、そう、今月エレナさんに初めて勝ったでしょ、そのご褒美に一緒にご飯でも食べに行きましょうって誘ったのよ。相羽さんは満面の笑みで肯いている。

あれ、理沙子さんは?と聞くと、先月井上さん達と初勝利(相羽さんを除く)祝いを行っていたとの事。そうか、相羽さんだったら南さんと2人のほうが本人も喜ぶだろうという裏方の発想だろう、あの娘の喜びようをみているとGJ!といった所だ。

じゃあこれで、と南さんが横開きのドアを開けると、赤と黒の威圧感のある大型バイクが鎮座ましましている。え?バイクで行くんですか?

「ちょっと遅くなっちゃったしね、こっちのほうが早いし店までこれで行くつもり。大丈夫よ、ヘルメットはいつも2つ用意してあるから。」

当たり前です。そういえば相羽さんは南さんの後ろに乗るのは初めて?

「はい!バイク自体初めて乗るので楽しみです!それでは、行って参ります!」

とにこやかに敬礼しながら相羽さんは挨拶をする。じゃあ南さん、後ろに乗っけてるんですからくれぐれも安全運転でお願いしますよ。と念を押すとあら、私は昔から安全運転よ。との返事。いや、安全運転する人は何度もキップ(赤も含む)を切られませんから、とか色々というべき言葉があるのだが出てこない。仕方ない、じゃあ相羽さん気をつけてね。

「はい」

死ぬなよ。

「え、何か言いました?」

いえ何も。

「・・・・・」

む~~~んと、相羽さんは納得そうな顔をしつつも、じゃあ今度南さんの話を聞かせてくださいね!と言ってヘルメットを被り、外で早速破壊的なエンジン音を響かせているリッターバイクにおっかなびっくり跨っていくと、爆音を残しつつ2人が目の前から消えていった。さて、待たせている人もいる事だし、残っている仕事を片付けるとしますか。

そして次の日、相羽さんは練習を休んだ・・・

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2007年4月16日 (月)

レッスルリプレイ外伝「恋心 エラー連発 処理困難」

美月さんの様子がおかしい。先輩や同僚その他、普段から2.3本ねじが緩んだり外れたり、もしくはねじすら無かったりしている人間揃いの新世紀プロレスの中で、レスラーとしての体つきはまだ若干華奢だが、団体を運営するに当たって大変貴重な常識的な言動と、これまた貴重なツッコミ役として入団以来八面六臂の大活躍中の彼女なのだが、困った事にここ数日元気が無い。

時々天井を見上げてため息をついたり、食もあまり進まない様で、夕飯のおかずを残して冷蔵庫に仕舞うところも何度か見ている。入団当初にも食が進んでいない事はあったが、それは厳しい練習に体が慣れる以前の話であり、入団後2ヶ月も過ぎようとする今現在ではそれも考えづらい。となると、一番可能性が高いのは・・・

「恋ね」

利美さん、いきなり人の背後で呟くのは止めてください、元南海のキャッチャーじゃないんですから。もしくはササヤキレポーターの佐々木さんとか・・・そうですか知りませんかすみません。

でも、美月さんに恋人ですか?それにしては今まで休日にどこかに出かけたりしてた風では無いですし、あと元気が無いという事は、すでに交際していてそれが上手く行っていないという事かとも思うんですけど、まだ岐阜から出てきて日も浅いのにそんな手早く出来ますかね?と素朴な疑問をぶつけてみる。

「私も昨日相羽さんに言われたばかりなんだけど、すこし気になってね。今日も竹下コーチにも声を掛けて練習中の様子を教えてもらったんだけど、コーチが言うには2週間くらい前から少し違和感はあったみたい。あと失恋とかで無く、片思いっていう可能性もあるわよ。まだ15歳だし、基本的に素直で純粋な娘だから、どちらかといえばこっちの方が有り得るかしら」

「あら、私は昔から素直で純粋よ」

まだ何も言ってないですし思ってもいません、これからじっくりと反論は考えますが口に出す事も無いです。何故なら命が惜しいから。

「でも確かにこの頃美月ちゃんは変ですよね」

と会話に飛び込んできたのは永沢さん。3番目に美月さんのツッコミを受けているのは彼女、因みに1番が白石さん2番目が相羽さんだが、つっこまれても凹まないというか全く気にしない彼女に対しては、6期も上の先輩と言う事もあり、この頃は諦めつつ一応・・・といった感じになっている。と言うと永沢さんも何か気になる事が?と聞くと、

「う~ん、うまく言葉では説明できないんですけど、何か私の初恋のときに良く似てるような気がするんですよ」

と役に立たない返答。でも永沢さんの初恋の話は気になるなあ。

「どうせ舞の事だから、ペットショップにいた猫とかじゃないの?」
「な!何で分かったんですか!」

何だ詰まらん。そういえば入団当初、寮の部屋で猫を飼おうとして皆に止められた前歴もあるからなあ。まあ、それはともかくとして、じゃあ少し周りの人から話を聞いてみて原因を探ってみますよ、とその場を離れ、もう少し有益な情報を集める。

証言その1・・・寮母さんの話

そうねえ、美月ちゃんの調子がおかしいのは、4月シリーズで肘を痛めて休養していた時期からよね。湯布院から帰ってきてから数日してからかしら、少し考え込んでいる姿も時々見かけるし、時間を気にする所も目に付くわ。

そういえば一昨日かしら、すこしこそこそしながら寮を出る所も見たけど、別にそれほど遅い時間じゃ無かったし1時間もしないうちに帰ってきたから、別に大げさにするほどでも無いかと思って言わなかったんだけど・・・

そうですか、有難うございます。

証言その2・・・酒屋のご主人

美月ちゃん?ああ、そういえば数日前に川沿いの道を走っていた所を見かけたよ。

川沿い・・・ですか?

うん、この頃腹回りが立派になってきたから、少し運動でもしようかと思って、サイクリングコースをよく自転車で走ってるんだけど丁度そのときにね。挨拶したらあの娘にしてはかなりビックリしていたのを覚えているよ。うん?顔つきまでは分からなかったな、何せ少し暗い道だからね。見慣れているあの娘だから気がついたようなものだよ。

そうですか、有難うございます。

証言その3・・・相羽 和希

利美さんに話した以外で気になる事・・・ですか?そういえば美月ちゃん、この頃早朝と夕食後にジョギングしているのは知ってます?。今度一緒に走ろうかって言っても、本人は乗り気じゃないみたいだし、朝は私苦手だからまだ一度も一緒に走った事は無いんですけどね。あ、あとその所為か、この頃美月ちゃん、あまりボクの会話に突っ込んでこないんですよ、それはそれで物足りない感じですけどね。

ふむ、そうなると川沿いのジョギングに秘密があるのかな?悪趣味かも知れないが明日辺り、気付かれないように追いかけてみよう。と考えていると、相羽さんから声を掛けられる。

美月ちゃんといえば、明後日誕生日ですよ。プレゼントは何にしましょうか?

お任せします。財布は事務方が握っているからね、そこで許される範囲であれば何でも良いですよ。

そして明朝、無事尾行を済ませて彼女の懸案事項を確認する。成る程、誕生日プレゼントはこれで決まったかな。まずはレスラー陣と他の面々の許可を受けてからだが。

5月26日 PM5時

久しぶりに社長がジムに来ての挨拶。

皆様お疲れ様です、さて今日は先月入団した杉浦さんの誕生日です、杉浦さん誕生日おめでとうございます。と言うと、そこここから拍手や祝いの言葉が飛んでくる。いつも真面目な表情を崩さない彼女の顔も少し和らいで、年相応の可愛らしさが出ている。

さて、各人プレゼントは考えているかと思いますが、それとは別に団体としてプレゼントがあります。と社長から目配せされた井上さんが、一旦外に出て籠を持ってくる。

「これは・・・」

籠を開けて出てきたのは子犬3匹。美月さんも、自分が今まで毎日餌をあげていた子達が出てきて驚きを隠せない。皆で面倒をみる事が出来れば飼ってもかまわない、けど、犬の世話にかまけて練習をサボらないようにね、特に永沢さん。

社長に急に話を振られてブーたれる永沢さんと、それを見て笑うレスラー達。その後美月さんから詳しい話しを聞いたところによると、散歩中に捨て犬の段ボール箱を見つけてしまい、そのまま放っておけなくなり、さりとて寮に持って帰るわけにも行かないと思い、川沿いの橋のたもとに箱を移して毎日餌をあげに行っていたらしい。夕飯を残していたのも、犬が食べられそうなものを持っていく為だったのだろう、まだ給与らしいものは碌に出ていないから仕方ない。

この後、新世紀の突っ込み担当の切れ味は復活し、又新世紀に入団した犬の名前をどうするか。大もめに揉める事となるのだが、それはまた別の話。

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Nさんの所で企画されている「川柳金賞」の句のSSです。とりあえず書いてみました~

何か体が重いので、今日はこれまで~~

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2007年4月 5日 (木)

レッスルリプレイ外伝 「正比例?ボタンの数と 心拍数」

寮の食堂は、レスラー陣や自分も含めた寮生活者の憩いの場となっている。社長も元々の目的がそれだったようで、6人掛けのテーブルが4つあり、結構な人数が集まっても苦にならない程度の広さとなっている。

TVやパソコンもあるのもそうだが、肉体を駆使するレスラーにとっては食料が身近にあるのが一番の理由だろう、皆自分も部屋があるにも係わらずここでだべったり食べたり作業をしたり本を読んだりしている、そんなある日の事。

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後ろから永遠の16歳のメロディが流れる、これはみことさんの着信音だ。テーブルから離れて廊下で話をしている声が微かに聞こえる。ふと画面から目を離し振り向くと、みことさんと話をしていた相手と目が合う、手持ち無沙汰になった彼女が近づいてきて自分に話しかけてくる。

「そういえば、姉さんっていつ携帯が使えるようになったんですか。以前から不思議だったんですが本人に聞くのも悪い気がするし。やっぱり普通に触っているうちに覚えたんですか?」

「スイレンさん。スイレンさんは普通・・・と言うほど慣れている感じでは無いけどまあ一般的といえる程度は使えるよね、それはどうして?」

「私は元々家を継ぐ気が無かったものですから、御山の下の学校に両親に無理を言って通っていました。だから友達の家でゲームをしたり一緒に料理を作ったりビデオを観たりしてました、だからでしょうか。そういえば姉さんったら凄いんですよ。私がちゃぶ台にCDを忘れていった事がありまして、それを部屋に届けにきてくれたんですけど

『スイレン。居間に、れこーどを忘れてましたよ』

ですよ。その頃は姉とは距離を置いていた頃なのですが、流石にレコードっていつの時代よ!って笑ってしまいました。だからそんな姉が携帯を普通に扱っているのをみると驚いてしまって」

なるほど、だから妹さんは簡単に電化製品を扱えるのか。というよりあそこから下の学校まで通ってたの!確か1000段くらい階段があったよね。

「いえ、800段くらいです」

似たようなものです。でもみことさんもそう簡単に慣れた訳では無いんだよ、折角だから・・・と廊下に目をやると、まだ話を続けている様子。スイレンさんも話相手が電話中では詰まらなかろう、折角だから、お姉さんの努力の遍歴いや、カンナさんの努力の遍歴を話ししてあげるよ。

「お願いします。でも、カンナ先輩の努力なんですか」

それはね。

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団体設立から3年目に入ると、大分金銭的に会社も潤ってきていたから、レスラー全員に携帯電話を配布するっていう話になったらしいんだ。でも、みことさんだけはそれを拒否してね。瞳孔を拡げつつ体を震わせながら『私には、この鬼神の宿る機械は扱えません』って言い出してね。

その代わりにどこから見つけてきたか、あの黒いジーコロ廻す電話を部屋に引くことの許可を貰ってたけど。自分はまだその頃には職員ではなかったけど、色々と武勇伝を聞いているよ。初っ端はテレビとレンジの区別が付かなくて、泣きそうな顔で事務所に駆け込んできて『テレビを壊してしまいました』って言われて社長が見に行ったらレンジのドアを開けただけだったり、洗濯機は二層式しか使えなかったり、まあ色々とね。で、そこで現れた救世主がカンナさんな訳だ。

「呼びました?」

おや、カンナさん。さっきからみことさんの話しをしていたんだよ、どうやって機械恐怖症を克服したかっていう話をね。折角だから一緒にお茶でもしない?はい。と言って給湯室に向かう所をスイレンさんが、いえ、私が。と押し留めてお茶を淹れにいく。

で、カンナさんの努力の遍歴だけれども・・・と熱いお茶を啜りながら話を続ける。みことさんも戻ってきたが、この話を一緒に楽しみたいという事で話の輪に加わる、でも、スイレンさんもお茶を淹れるのがうまくなったなあ。

確か自分が入社してからだから4年目の春だったかな。カンナさんがみことさんの為にある道具を作ってくれたんだよ。みことさんは、まあ今でもそうだけど、ボタンの数が多いと全く駄目なんだよ。今でも部屋のリモコンは、電源ボタンとチャンネルボタンしか見えないようになっているんだったよね?と聞くと少し恥ずかしそうに頷く。

だから、ボタンを見えないような何かを作れば良いのでは?と思いついて、実際作ったのがカンナさんなんだよ。最初は携帯を覆うような木のケースで、電話を受けるボタンと切るボタン、そこだけ空けといてね。それで問題なく電話を受けられるようになるまで2ヶ月掛かったっけ?

そこからそのケースにカンナさんが細工をしながら少しづつ表示部分を増やしていって、今では何とかメールも出来るようになったんだよ、伊達さんも喜んでたよ、みことさんはきちんと返事を書いてくれるから嬉しいって。すると困った顔で、でも、返事を書くのに最初は1時間くらい掛かっていたんですよ、今では30分くらいで送れるようになりましたが。との返事。そうか、苦労しているんですね。

あ、そういえば先程の電話なのですが、TGVのなかじまさんから電話があって、今度あにめの声優をやってみないかって言われたんですよ。近日中に会社にも連絡がくると思いますが、そのときはよろしくお願いします。確か、天元突破紅蓮裸顔って言ってましたか。

TGVの皆さんは義理堅いというか、きっとみことさんのファンになったんだろうなあ。芝居の再演も3度を数えたし、こうやって声を掛けてくれるのはありがたいことだ。さて、自分は中断している仕事の続きをするとしよう、じゃあ。と言って椅子をガラガラと動かしてPCの前に動いて仕事を再開する。そんな日常のひとこま。

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今回の話は「伝説の垂れ幕」さんの川柳金賞を題材に書かせて頂きました。お許し戴けると嬉しいです。そして拍手のお礼等は、又明日、ということで。あ、明日は川柳だ。どうなる事やら。

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2007年3月31日 (土)

レッスルリプレイ外伝 「ある会社員の4日間」

4月某日

午前7時起床。朝飯と風呂(寮のレスラー陣は大浴場だが、スタッフ用の部屋はワンルームで一応は全て完備してある)等を30分で済ませ、愛車のポルシェ号(軽)に乗り込み職場へと向かう。職場は博多駅から車で20分程度、というと結構街中?と勘違いされるが、そんな旨い話は無く、工業地域と商業地域の境目。社長も良い場所に偶然廃工場があったから、少し痛んでいるが思い切って購入したと以前話をしていた位の建物。

雨漏りは流石に2.3箇所程度あるが、所謂オフィスビルでないのだから、それで充分だろう。それよりも以前工場だっただけあって、天井が高く、各部分の窓を開けるとあれだけの人数が動いても、さほど熱がこもらない。冬は締め切ればそれなりに暖かくなるし、床はコンクリの打ちっぱなしなので(外部の方には内緒だが)焚き火も中で出来るし、隙間風も入るので中毒の心配も無い、ぼろい建物の割りに良く出来ている。

ただ、流石にこれだけメジャーな団体になっても、廃屋じみた状態のまま使用しているのは体裁が悪いとは社長自身も理解している様子だが、問題なく使えるものはついつい後回しになってしまい、ペンキで外面だけ誤魔化しているのも世の常である。そんな廃屋が今日の舞台。

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午前8時、職場に到着。自販機で缶コーヒーを飲み一服していると、何故かジムから何かの音がする。自分より早く来る人間なんて余りいないので、泥棒だろうか?とも一瞬思ったが、こんな金目のものが何も無い所に入ったところでどうするのだろう。鍵・・・は開いている、と周囲に気を配りながら中に入ると、良い感じで汗をかいているスケートを履いたおっさんがいた。社長、何してるんです。

「見て分からないか」

「見て分からないから聞いてるんです」

理由を聞いてみると、来月末に予定されている「IWWFの皆さんとのお別れ会(仮称)」でのカラオケ大会にて、新たな技を開発しようという心積もりとの事。又、折角相羽さんのリングネームが決まったのだから、それに合わせようと思ってね、と言われてしまう。あれ、社長はあのジャニー何とかさんの団体って嫌いじゃなかったでしたっけ?それに昔からカラオケでは弾き語りの十八番があるじゃないですか?すると、男は嫌いだが、歌には罪がないとの返答、そして

「折角これだけ広い場所があるんだから、ここでしか出来ない芸を求めていくのが芸人の務めぢゃないか」

と力説、芸人て。

そして、何やかんやで何故か自分も付き合う事になり、明日から1時間早く起きることとなる。とほほ・・・

で、2日目。

眠りを欲する体と心を無理やり押さえつけ、起床時間を1時間早めて出勤。昨日は仕事帰りに社長と一緒にスポーツ用品店で買い物をした手前、もう後戻りは出来ない。でも社長が筋肉痛にでもなっていれば良いなあ、と淡い期待をしつつジムに向かうと既に社長は臨戦態勢、元気だなあ。

皆にばれないように(芸を披露するのはギリギリまで秘密の方が良いらしい)1時間半程度動き、シャワーで汗を流して朝練終了。朝練なんて学生以来だよ。この場所だと、多少汗をかいても全員ここに来る途中で汗だくになっているから、ばれる心配がなくて良い、出来れば誰かにばれてこの案件が中止になるのが一番良いのだが。

3日目。

自分は見事な筋肉痛。一応あの後もレスラーに頼んでストレッチをしていたのだが、それでもいつも使用していない筋肉を使うのは骨なのだろう。軋む体を無理やり動かしてジムに向かうと、やはり社長は臨戦態勢、つくづく元気だなあ。昨日と同じ時間練習をして解散するが、自分が筋肉痛の事を話したところ大笑いされる。全く、そこまで笑うことはあるまいに。

4日目。

昨日は一昨日以上にケアをしたお陰か体が慣れてきたのか、昨日よりは少し体が楽。体は楽だがそれでも眠りを欲する心をなけなしの精神力で押さえつけて出勤しようとすると、社長から携帯に連絡がある。体調不良の為、今日は1人で練習して欲しいとの事。仕方ない、1人でガラガラと運動をするとしますか。でもどうしたんだろう。

そして当日午後、事務所の南さんから呼び出される。あの声色からして碌な用事で無いのは確かだ・・・失礼します、と中に入ると独特の匂い(臭い)が鼻をつく。中には社長と井上さんと南さん。ああ、ばれましたか。そして社長は筋肉痛ですか、3日遅れの筋肉痛だったんですね。

そして自分は尋問であらいざらい今までの顛末を吐き出す事となり、その後社長は2組のローラースケートの領収証について厳しい叱責を受け、結局ポケットマネーで購入する事となったようだ。そして自分は社長命令(スケート代の元を取るため)として、カラオケ大会ではスケートを履いて「STAR LIGHT」を歌う羽目になる、しかし1人では恥ずかしいなあ。

そうして今後は秘密にする必要がなくなったため、朝練ではなく仕事後にしようと思ったのだがやはり夜は飲みたいので、朝練は継続することとなる。それにしても、体は使うしストレッチもきちんとするので体調はすこぶる良好、運動するようになったので体重も3.4kgは落ちたろうか・・・レスラー陣はこれからも続けたらどうです?と気楽に言ってくれるが、少し悩みどころ。

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因みに本日の話は、「レッスル社長検索」浜岡様が、以前ここの紹介文の所で

ローラースケート履いて「スターライト」(光GENJI)歌う社長が見たい

と書かれていたので思わず書いてしまいました、でも社長が結局歌うのはジョンの歌。

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2007年2月22日 (木)

レッスルリプレイ外伝 「後日談」

そういえば、ラビは新しいノートPCを買うって言ってたよな。

はい、折角新しいOSが出るんで、今のメモリだときっとウンともスンとも言わないと思うんですよね。

で、古いのはどうするんだ?

まあ、一応売るにしろ捨てるにしろ1回クリーンインストールしてから考えますよ。

そうか、もし良かったらうちの会社で買い取ろうか?

え、本当ですか?

ああ、伊達くんの件があるだろう。これ以上メール禁止令を続けていると俺たちの体が持たないし、PCでメールすれば腕の状態も、それ程ひどい事にはならないと思ってね。

なるほど。そういうことでしたら、敢えてデータを消す必要はないですね。

そうして、伊達さんの部屋にほぼメール専用のPCが鎮座ましました。が、1ヶ月程度で漬物石以下の存在と化してしまう。社長が本人にその理由を聞くと、

「絵文字が入れられないから」

と至極御尤もなご意見。

こうして伊達さんが1人暮らしを始めてから3ヶ月経ち、何が変わったかと言えば、伊達さんの部屋に片付けられる事の無いゴミが1つ増えただけとなる。その1ヶ月後には南さんも当然のように出戻ってきて、今日も、新世紀プロレスの寮は、何事も無く平穏な状態となりましたとさ。そして伊達さんは、皆よりも少し入念に基礎練習を行うようになったという。もしかしたら、彼女の強さの秘密はそこにあったのかもしれない。

めでたしめでたし。

何がめでたいんだろう?

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2007年2月21日 (水)

レッスルリプレイ外伝 「怪我の訳 メールしすぎの 腱鞘炎」

まず最初に拍手のお礼から

Nさん・・・南さんの引退は、というより生粋の1期生の引退は寂しいものです。そういえば、自分は今まで伊達さんの引退までゲームを進めたことが無かったりします。なので、この頃は(も)実際のゲームがあまり進んでいなかったりします。

で、今日は、自分の川柳を取り上げるのは如何なものかと思いますが、それを題名とした話です。毎度のことですが、あくまで私yatterzoooの想像の産物ですので、公式云々とは、寸毫たりとも関係ございません。ただ、楽しんでもらえれば幸いです。では。

8年目8月某日

南さんの引退興行となれば、既に引退している皆も何とか予定を工面して集まってくる。都合の良い・・・といっては失礼だが8月シリーズであった為、秋山さん・氷室さんも学校が長期休暇となっており、色々と手伝いつつ昔話に花を咲かせる日々。何事も無かったかのように寮でメシを食っているのもご愛嬌だが、寮母さんもまかないの皆さんも目が潤むくらい喜んでいるので、あえてどうこう言うつもりは無い。実際自分の目も花粉の所為か、景色がかすんで見える気がするくらいだ。

当然の事ながら、休憩時間や食事の時間はOGを囲んで色々な話になる。今の仕事の話、学校の話、そして、昔話。今日も今日とて別に何かあるわけでもないのだが、夕食後も皆食堂に集まって、こののんびりとした雰囲気を楽しんでいる。

その中で勇美さん、蓮子さんと一緒に台所でお茶の準備をしているときに、質問されたのが今回の事の発端・・・そういえばOGの方に、伊達先輩からメールは来ているか質問されたんですけど、何か昔にあったんですか?と聞いてくるのは勇美さん。蓮子さんは真剣にお茶を淹れている、ふとみると永沢さんは引き出しを手当たり次第開けながら、真剣にお茶請けを探している。

あれ、まだその話って知らなかったか。永沢さんは?と声を掛けると、詳しくは知らない様子。まあ、あの事件から5年経ってるし大丈夫だろう、と伊達さんを目で追うと、楽しそうにみんなが喋っているのを聞いている。で、何があったんですか?自分がまだここの団体に所属していない時だから全てを知っているわけではないけど、伊達さんが未だに寮暮らしを続けている理由だけど、実は携帯メールが原因の1つなんだよ。と、話を始める。

3年目9月、 マイティさんと入れ替わりに伊達さんが寮生活に入る。会社で借りている関係上、折角だから契約を解除するより誰かが使ってくれれば良いという事で、やはり団体の実力者である伊達さんに話がいった様子。本人はさほど乗り気ではなかったようだが、1回位1人暮らしをしてみるのも良い経験だよ。という社長らの言葉に納得して、8月シリーズの最中に引越しを頼んでいたね。そこまでは良かったんだけれど・・・とりあえずお茶をみんなに持っていこう。

・・・で、その後だけれども、と7人で固まっているテーブルから少し離れた場所で4人は座る。と言う訳で、話の続きね、伊達さんが引越してから半月くらい仕事の関係でジムに来なかったんだけど、来て見るとなんか雰囲気が少し重い感じなんだよ。別に活気が無いわけではないんだけど。で、丁度阪口コーチが皆の練習を見ながら、なんか釈然としない感じだったから声を掛けたんよ、どうしました?

いや、伊達君の調子がおかしくてね。と見ると、サンドバッグにとてもよい感じで蹴りを入れているが、阪口コーチの見立てがそうなのだから、何か訳があるのだろう。どこらへんですか?と聞くと右手を無意識のうちに庇っているとの事、折角なので後半のスパーも見てみたが、なるほど注意深く右手を見てみると、いつもより力勝負を挑まない感じだ。

試合でも同様なそうで、コーチ曰く今のところは様子を見ておいて、シリーズ終了後に病院に行ってもらうから、心配しなくて大丈夫だよと言われると、流石新世紀のお父さん(社長では少し威厳が足りないか)、それだけで自分もほっとして、それ以降はあまり気にしないで過ごしていたんだけど、最終日に見た時には、手首を痛めてるのはすぐに分かるくらいまで悪化していたんだ。

そして9月シリーズ最終日も過ぎ、記事を持って事務所にお邪魔しようとすると、なぜか事務所の入り口に大きな書類入れを持った伊達さんが立っている。訳を聞いても、泣きそうな顔で何もいわずに去ってしまったから、多少それを気にしつつもノックをして入ると、向こうも何とも拍子抜けな顔をして自分を迎える。

とりあえず自分の用件を簡単に済ませて、伊達さんの話を振ると、実は5時間前に彼女から、今から診察を受ける旨のメールが届いており、診察が終ったら診断書を持ってくるよう伝えてあったようで、事故にあってなければ良いのだが・・・と2人で話をしていた所だという。でもさっきまでいたのだから、と素早くドアを開けると、戻ってきていたのか彼女が立っていた。

伊達さんから診断書を受け取り社長に渡すと、体を少しでも小さくしようとするかのように縮こまっている伊達さん、本当は自分は帰りたかったんだけど、袖をつかまれてしまい帰れない。内容は見えないが、本当に困った表情をしている2人を見るのは久しぶりだ。ラビ、お前も見てみろ、面白いぞ。

と言われ、良いですか?と伊達さんに目で問い合わせてから読ませて貰う。

診断書

伊達 遥 殿

病名 腱鞘炎

患部の2週間程度の安静を必要とする。

伊達さん、この原因は何だと思う?とにっこりと社長に聞かれると、極々細い声で「メール?」よくよく聞くと、自宅での暇な時間は大体メールの入力に費やしていた様子。確かに自分にも何回かメールも届いて来ていたが、普段の会話より饒舌で絵文字もふんだんに使ってあって、こういう所は年相応だなあなんて気楽に思っていたけど、冷静に考えると、自分にもメールを出すくらいなのだから、他の人間には正直出し放題くらいの勢いだったのだろうね。

怪我の原因がそんなんだったから、社長も怒る気力も失せたらしくて、罰則としてはメール禁止令と10月シリーズの休場、テーピングをしての基礎練習にて放免となったんだ。対外的には「試合中での手首の負傷の為」としたようだけど。

でも、それだけだと寮に戻ってくる必要は無いよね。と、聞いている人たちが疑問に思っているだろう部分を言うと、無言の肯定が返ってくる。とりあえず少し冷めてしまったお茶で、軽く喉を潤してから話を続ける。

で、10月に入って4.5日経ってからかな。夜自宅に居ると携帯に電話が掛かってきて、登録されてない相手だったから5コール程待っていたけど鳴り続けていたから出てみたんだ。

「もしもし」「・・・・・・・・」
「もしも~し!」
「・・・・・あの・・・伊達です・・・・」
「こんばんわ、でもどうしました」
「・・・・・・・・」
「番号は、社長から聞いたんですか?」
「・・・・・井上さんから・・・」
「そういえば、手首の状態は大丈夫ですか?」
「・・・・大丈夫です・・・」
「・・・・そうですか・・・」
「・・・・・はい・・・・」
「あの?何か用事があるのでは?」
「・・・・・いえ、大丈夫です・・・じゃあ」

そんな事が何回かあったから社長にも聞いてみたら、社長を含めてほぼ全員に理由不明の電話が掛かってきているとの事。その後社長らと伊達さんが話し合ったところ、彼女は人見知りだが寂しがりやでもあるようで、今まではメールでそれを紛らしていたのだが、今は禁止されているので電話を掛けまくっていたそうだ。他のレスラーも夜に何度も鳴る電話と喋らない相手に正直閉口していたらしく、結局2ヶ月で1人暮らしは終わり、代わりに南さんが入居する事になった・・・そうそう、伊達さんからメールが来たら、丁寧に返事してあげてね。返事を出さないと次の日にとても悲しそうな瞳で見てくるからね。

伊達さんについてはそんな所かな?とみんなを見ると、何か生暖かい目で私を見ている。ふと振り向くと、伊達さんがとても悲しそうな瞳で自分を見ている。まあいいじゃないですか、5年前の話ですから、もう笑い話にしたって、ねえ。

・・・今度可愛い携帯ストラップ探してくるので、それで勘弁してください。

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2007年2月13日 (火)

レッスルリプレイ外伝 「ばれんたいん ちょこの代わりに おはぎです」

この作品は、先週のレッスル川柳で入選されました同名の句を読んで生まれた想像の産物です。お嫌でしたらご連絡戴けますでしょうか。喜んでもらえたら幸いです。

本当は、明日投稿しようと思っていたのだが、こういうイベントって、その前日が一番楽しい物かと思い、急遽今日に致しました。では、レッスル「お笑い門オンステージ」初投稿です。

2月10日

いつものようにホワイトボードの買い物リストを見ると、下のほうに綺麗な字で

「あずき5kg」「もち米10kg」「砂糖4kg」「きなこ 1kg」

と書いてある。一番下には華麗ぱん10個、といつもの事ながら余計なものも書いてあるが、ああ、もうこんな季節か。さて、丁度練習も終る時間帯だし、近藤さんを借りて買い物に行くとしよう。

近藤さん、一寸いいかな、と声を掛けると「はい、なんでしょうっ」と大きな声が返ってくる。以前だと「はいっ!なんでしょうっっ!!」くらいの勢いだったので、真人間に近づいてきたのだろうか、「っ」の数も減ってきたし。すると美冬さんも一緒に行くと言ってくれた為、3人での買い物となる。

それにしても、ここの買出しって良くわからないですよね?と近藤さん。というと?例えばですけど、夜食用としては有り得ないほど減りの早いカレールーとか、いつも箱で買っているカップ焼きそばって誰が食べてるのか、とか・・・今回だって「あずき」と「もち米」なんて普段の買い物では買いませんよねえ。

確かに、でもこの団体ではこれを心の拠り所にしている人間が多いのだよ、自分も含めてね。そういえば今年も美冬さんは手伝うの?と問うと、はい、流石に皆さんほど綺麗な形には出来上がりませんが。と話を進める2人に置いて行かれている風の近藤さん。

そうか、最初から話をしないとわからないかな。美冬さんも、この季節の風物詩の話の始まりは聞いたことなかった?確か3年前だった気がするけど・・・と昔話を始める。

草薙さん、困った顔してどうしたの?といつもの様に背筋を綺麗に伸ばして座りつつ、寮の食堂に置いてある新聞紙を読みながら悩んでいる御方に声を掛ける、ふと読んでいる記事を見ると土曜版の「バレンタイン特集」もうこんな時期か・・・で、何を困っているの?と聞くと、ん~~と顎に手を置いて悩みつつ話し始める。

はい、こちらにお世話になってから約3年、世の中には私の知らないことがこれほどまでに沢山ある事を知りました。そのうちの1つがこの「ばれんたいん」という行事です。ただ、色々な記事を見る限りでは、女性から男性に告白をする日とありますが、「義理ちょこ」というのもあり、何を目的としているのかがよくわかりません。

あと、ちょこというものに私は疎いもので、売り場に足を運んでも何が良いのか混乱してしまい、先輩方の言われるまま購入していたのがここ2回だったのです。ですが、もうこの行事も3回目、ですので自分自身でも納得できるものにしていきたいと思いまして、先程から考えているのですが・・・

なるほど、本命がいないにも関らずこのイベントにこれだけ悩むのも彼女らしい。というと、メッセージカードの内容も上の人間から?と聞くと、肯定の答えが返ってくる。やはり黒幕がいたか・・・確か一昨年は「レスラー全員」某高級ブランドのケーキ希望、去年も同じくレストランでの食事希望と書いてあって、去年はホテルの食べ放題で勘弁してもらっていた。

段々高額商品になっていくので、来年辺りは「豚1匹」、5年も経てば「庭付き一戸建て(犬小屋付き)」にでもなりそうな勢いだ。

そうだね、バレンタインって男女交際をされている方にとっては、よく言う「愛の告白」の日かもしれないけど、仕事仲間に対してであれば、難しく考えないで感謝の気持ちを伝えられれば何でも良いんじゃないかな?草薙さんは、普段から皆に感謝の気持ちを持ちつつ人に接し、戦っているのは自分も感じているし、自分もいつもそうありたいと思ってる。

でも、気持ちだけでなく、それを形で貰いたいっていう欲求も、多分皆が持っているものだと思う。だから、年に1度くらいはそういう日があってもいいんじゃないかな?確か戦後になってからメリーさんがこの行事を立ち上げたはずで、他の日本古来の行事と比べると歴史はさほどない催しだけど、流行に踊らされている、というものではなく、七夕とかと同様、日本の季節行事と思ったほうがきっと楽しいよ、こんな答えでいいかな?

すると得心したようで、はい、これで気分良く「ばれんたいん」を迎えられそうです、有難うございました。それでは失礼致します。と深々とお辞儀をして部屋へと戻っていく。うむ、本人が納得しているのなら良いが、気分良く迎えられるのは貰う方なのでは。

そして2月14日の昼間、おいラビ、井上さんが何か企んでる様だけど何か知らんか?と事務室に電話が掛かってきた。知りませんよ、それにあの御方がそんなほかの人間にわかる様な企みごとをする人じゃ無いじゃないですか。と当然のように答えると、ま、それもそうだね。でも、何か気のついたことがあれば教えてくれ、と言い残して電話を切る。

誰が企みごと云々だって、と後ろから声がする。おや井上さん、この団体にそんな芸当ができる人が貴女以外に誰がいるんでしょうか。というと南さんがいるじゃない、とこれまた平然と答える。これは目くそ鼻くそを笑うという奴だろうか。

で、早速だけど、コーチにも話はつけてあるけど今日の午後は2期生を借りていくわよ。あと、今日はずっとこの場所にいるわよね。はい、特別な用事がなければ。宜しい。じゃあ又仕事が終る頃ね、と言って去っていく。何が目的だ?

午後4時過ぎ、ジムに社長が現れる。井上さんに呼ばれて来たらしいが、まだ社長自身も詳しい事は聞いていないとの事。あといつもは外回りが主のスタッフも集合をかけられた所を見ると、流石にこの主旨がわかってきたが、一体何が出てくるのやら。レスラー陣も、今日は早めに練習を切り上げて着替えを始めている最中、会社のワゴンがジム前に止まり、3人が降りてきた。持ってきたのは「おはぎ」

井上さんが着替えの終ったレスラー全員を集めると、赤コーナーに女性陣、青コーナーに男性陣となり、そこで井上さんからの言葉。新世紀プロレスの男性陣の方々には、いつも大変お世話になっております。

その感謝の気持ちを込めまして、女性陣からはチョコと、草薙さんの希望でおはぎを作りました。チョコは日持ちしますが、おはぎは日持ちしませんので、今、ここで食べてください。なお、おはぎの作成には私たち3人と、寮のスタッフも関っておりますので、あとで寮の方にもお礼を忘れないで下さいね。

ご丁寧に魔法瓶3つ分のお茶も用意されていて、正に至れり尽くせりという奴だ。形も揃っていて、しかもとても美味しい。皆同じ思いの様で、口々に3人にお礼の言葉を述べている。

あんなに喜んでもらえるとは思いませんでした、と話しかけてきたのはその翌日。改めて感謝の言葉を述べると、こんな風に皆様からお礼の言葉を言われると、嬉しいですがちょっと照れてしまいます。カンナも喜んでましたよ、スタッフの皆が喜んで食べてくれたって。本当に有難うございました、来年もまた、有志を募って「おはぎ」を作りますね。といって軽やかな足取りで去っていく。

だから、有難うはこっちの台詞なのに。

は~そんな事があったんですか?と近藤さん、はい、あったんです。でも、こんなに沢山の材料でおはぎを作っても食べ切れるんですか?うん、この話には続きがあってね、その際に若干余ったから、ご近所の商店の方におすそ分けをしたんだけど、そうしたらそれが話題になっちゃってね、毎年期待されているから大目に作っているんだよ。

特にこの頃はファンの方々も楽しみにしているからね、もう2月14日はこの団体では毎年「おはぎの日」だよ、まあ作るのが苦手な人は普通にチョコだけど。

だからね、3月は凄いよ。皆お礼の物品を持ってきたり送ってくるからね、誰とは言わないけど、殆ど手伝わないくせに一番もらい物を食べている人もいるし。それもあって、以前に比べるとホワイトデーに無理難題を言われなくなって正直助かってるよ。

そうだ、折角だから近藤さんも手伝ってみたら?う~ん、料理は全般的に苦手ですが・・・わかりました、やってみます。こうして、今年もまた「おはぎの日」がやってくる。

「おはぎの日 皆が喜ぶ 和の心」

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